「熊本の台所」として知られている熊本地方卸売市場(通称:田崎市場)の楽しみ方をお伝えしているシリーズ。最終回は、田崎市場に行ったら足を運んでほしい、イチオシの飲食店をご紹介します。市場ならではの食材を使ったメニューが並ぶ定食屋さんや有名店で腕を振るっていたシェフの店など、美食家の舌をうならせる名店が揃います。ぜひご賞味あれ!
競り落としたばかりの新鮮な刺し身がてんこ盛り!
早朝5時30分から鮮魚の競りが始まる田崎市場。水揚げされたばかりの鮮魚は、とにかく新鮮です。
競り落とされた鮮魚を使ったメニューを食べられる店舗は、市場内にも数店あります。その一つ、2020(令和2)年4月にオープンした「いろは食堂」は、店主の杉本順子さんが切り盛りする“おふくろの味”を楽しめる定食屋さんです。「市場ならではの新鮮な魚を、おなかいっぱい食べて欲しい」との思いから、朝6時のオープンに向けて準備を始めます。
早朝6時~8時頃までは、競りを終えた業者の人。10時30分からの営業時には、一般のお客さんも続々と店に入ってきます。
同店で目を引くのは、どんぶりからあふれんばかりの刺し身がてんこ盛りになった名物の「海鮮丼」(サラダ、小鉢2種類、みそ汁、漬物付き)。10時30分から提供されるこのメニューを求めて、県内外から多くの人が訪れています。
どんぶりには、本マグロに赤身マグロ、カツオ、タコ、ネギトロ、イクラ、鯛、サーモン、イカ。そして、ひと際目を引く大きな生エビがドドーン!刺し身でご飯がまったく見えないボリューム満点の丼ぶりです。
「海鮮丼を頼むお客様が多いのですが、チキン南蛮定食や日替わり弁当など、隠れた人気メニューもあるので、いろいろな味を楽しんでみてくだいさいね」(杉本さん)。
■「いろは食堂」
住所:熊本市西区田崎町484-11-7
問合せ先:096-359-1680
営業:6時~8時、10時30分~14時(LO 13時30分)
休み:日曜、祝日
インスタ:@iroha_shokudou
市場で味わえる、本格フレンチの技法で作った洋食
熊本を代表する老舗フランス料理店「ケルンよしもと」の元3代目オーナーシェフ山本一哉さんが、2021(令和3)年に市場内にオープンしたのが、「洋食屋ターレ」です。幼少期から自給自足の食環境で育てられた山本さんは、大学生の時に将来の仕事として「“食”に関する仕事に就きたい」と考え、この道に進みました。
ホールからスタートし、フランス料理の技術を学び、オーナーとして経営にも携わる中で、いつしか「一人ですべてをやっていける小さな店を持ちたい」と考えるようになりました。
32年を節目とし、老舗店を後輩に譲り、以前から好きで通っていた田崎市場に、小さな洋食店をオープンさせ再スタートを切りました。山本さんは、「食の原点は、何といっても家庭。今は家庭料理が疎かになっていることに危機感を覚え、プロの料理人として培った技術を家庭で料理を作る人に還元していきたい」と、店に足を運んでくれたお客さんには、惜しみなくプロのノウハウを伝えています。
素材のおいしさを存分に引き出した山本さんの料理は、余計な装飾をそぎ落とした見た目の美しさにも引き込まれます。自慢のハンバーグは、「肉のおいしさはもちろん、こだわりのデミグラスソースの味を堪能してほしい」と語ります。
山本さんの作る料理の味に加え、プロの料理人から教えてもらえる料理づくりのヒントを楽しみにしているリピーターも多いそう。「今の料理人という姿は、実は仮の姿。料理人という姿を借りて、店に足を運んでくださる一人でも多くの方に、料理の醍醐味や食の大切さを伝えていくことが、本来私がやりたかったこと。これからは、この顔の見える小さな店で、思い描いていた夢を実現していきます」と山本さん。
目の前に並ぶ料理を堪能しながら、山本さんとの食談義が弾む楽しい時間を田崎市場で過ごしてみてはいかがでしょうか。
馬スジ&キーマ&ココナッツチキン3種を一皿で楽しめるスペシャルカレー
トロトロの馬スジが溶け込んだスパイシーなカレーが人気の「Hanmer(ハンマー)」。大量に使うタマネギも季節によって味が違うので、作り方を工夫しているというオーナーの野村美希さん。「もともと、私が家庭でカレーを作るときは馬スジを使っていて、それが評判よかったのです」。
多くの人が集まる市場で、嫌いな人はほとんどいないメニューをと考え、カレーの専門店を開いたのが2020年4月。すぐにそのおいしさが評判となり、若い人からご近所の高齢者まで、多くのファンを虜にしています。
おすすめは、何と言っても「ハンマースペシャルワンプレート」(3種のカレー、サラダ、コーヒー付)。自慢の馬スジカレーとキーマカレー、ココナッツ風味のチキンカレーの3種類が一皿で楽しめる魅惑の一品です。グリーンカレーを追加した4種盛りの「ハンマーデラックス」もオーダーできます。
ひざ軟骨を使ったマサラカレーなど、特別メニューが登場することもあるので、インスタをチェックしてみてくださいね!
■「カレーハウスHanmer(ハンマー)」
住所:熊本市西区田崎町430-9
問合せ先:096-326-3709
営業:10時30分~14時(LO 13時45分)
休み:水曜、日曜、祝日(臨時休業あり)
インスタ:@hanmer.0421
夜も楽しめる“市場めし” 新鮮な魚に舌鼓
市場というと、どうしても早朝のイメージがありますが、実は夜も営業している店があるのをご存じでしょうか。
鮮魚の仲卸業者「丸将水産」直営の食堂「魚良」は、鮮度はもちろん、ボリューム、手頃な価格も魅力の店です。
土曜限定の「ワンコイン定食」のほか、「本マグロ丼」や「刺身御膳」など、新鮮な魚をおなかいっぱい食べられるメニューが並びます。刺し身のほか、4種類の魚と海老の天ぷらが乗った「海鮮天丼」(サラダ、みそ汁付)もおすすめです。
なかなか訪れる機会の少なかった夜の市場、おいしい料理を見つけに出かけてみるのもいいかもしれません。
■「食堂 魚良」
住所:熊本市西区田崎町380-63
問合せ先:096-352-5262
営業:10時~14時(LO 13時45分) ※土曜のみ、6時~9時(LO 8時45分)もあり
18時~21時(LO 20時45分)※火曜、木曜、土曜のみ営業
休み:日曜、祝日(臨時休業あり)
市場内を散策しながらおもしろい物を発見!
田崎市場には、飲食物を店で提供する店舗もあれば、小売りをする生花店、薬局、包材店など、多種多様な店が軒を連ねています。
同市場の38店舗でつくる「えびす会」の会長を務める中村漬物代表の中村公一さん。中村さんの店は、創業100年を迎える老舗漬物店です。
中央区新町の漬物店で修業を積んだ先代が、暖簾分けしてもらい始めた店。「作った漬物をリヤカーで阿蘇まで運び、生産者から大根を仕入れて再びリヤカーに積んで帰ってきた時代もあったようです」。
田崎市場が完成し、3年後に新町から現在地に移転してきた中村漬物。熊本の特産品「高菜漬け」などのほか、東北の味「いぶりがっこ」など、全国各地の漬物が並びます。「昔ながらの漬物店なので、高菜漬けの束売りなども行っています」と中村さん。袋売りがほとんどの今、店先で言葉を交わし合う風景が見られるのも市場ならではです。
■中村漬物
住所:熊本市西区田崎町484
問合せ先:096-323-2773
営業:5時15分~10時30分
休み:水曜、日曜、祝日
■地方卸売市場共同組合「えびす会」
問合せ先:096-323-2757
インスタ:@kumamotoebisu
「田崎市場の歴史の中で、さまざまな業種が一つ一つ加わったり、抜けたりしながら、今のカタチが出来上がっています。歩いてみると、『こんなところにこんな店が』という発見もあると思います」と中村さん。
競りの現場を見学したり、市場主催のイベントに参加してみたりするほか、自分好みの市場グルメ店を探してみたりと、いろいろな楽しみ方がある田崎市場。実際に、自分で歩いてみると、自然と会話が生まれてきそうな店もたくさんあります。昭和にタイムスリップしたようなレトロ感漂う田崎市場で、皆さんのお気に入りを見つけてみてくださいね。
■熊本地方卸売市場(田崎市場)
住所:熊本市西区田崎町484(市場会館3F)
問合せ先:096-323-2001
※詳しくは、以下のページをご覧ください。
https://kumamoto-tasaki-ichiba.co.jp/
【田崎市場へのアクセス】
○熊本駅から、県道227号を車で約10分
○熊本市電A系統各停田崎橋行き田崎橋下車徒歩17分
○Charichariポート イオンタウン田崎から徒歩3分
https://charichari.bike/map?region=KMJ
【田崎市場の駐車場】
市場内に一般の方が駐車できる駐車場があります。ただし、午前9時までは有料(200円)。午前9時以降は無料です。市場には大変多くの業者が出入りしています。マナーを守って利用しましょう。
(構成・取材・文・撮影/大平誉子)
※一部写真はお借りしています
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